購入して走らせているうちにライトがちらつくようになった、
ギクシャクするようになったという経験をお持ちの方も多いと思います。
ここではビギナーの方でも対応できる簡単なメンテナンスについて記します
(ここに掲載していることを行ってみても上手く走らない場合は、
模型店や経験者に相談する、あるいはメーカー修理に出すことをお勧めします)。
また、メンテナンス中に万が一レールや車両が破損した場合、
筆者は責任を負いかねます。
自己責任でお願いします。
■ レール/車輪の汚れについて
レール/車輪の汚れについて
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走行トラブルで一番多いのがレール/車輪の汚れによるトラブルです。
鉄道模型は
コントローラー → レール → 車輪 → モーター
の順で走行用電流が流れ、車両が走行します。
要するにレールと車輪が電気接点になっているわけで、
その接点が汚れているとモーターに電流が上手く流れず、
走行不良を起します。
おおむね
- ライトがちらつく
- ギクシャク走行する
- 発進不良(=車両を軽くつつくと走行する)
- 走行中、ライトがほとんど点灯しない
- 速度が著しく低い、あるいはほとんど走らない
の順で程度が悪化します。
※車載カメラつき車両やサウンド付き車両はレール/車輪の汚れに敏感ですので、
ライトがちらつくよりも程度の軽い汚れでも画像が乱れたり、
音が濁る/小さくなるといった症状が出る場合があります。
また、
DCC(デジタル・コマンド・コントロール)
も通常の直流制御よりも汚れには弱いです。
上記の症状が出ている車両の車輪やレールを見ると、
なにやらアカみたいな黒いものが付着している場合が多いです。
この黒いものは
車輪とレールの間に生じる微細なスパーク(火花)によって、
空気中のほこりなどのゴミや油などが炭化したものと言われています(=電気接点のスパーク汚れ)。
スパーク汚れを放置して無理に使用を続けると、
汚れの面積がどんどん増えます
(接点の抵抗が増えるほどスパーク汚れが発生しやすくなるから)。
また、汚れも落ちにくくなります。
■ レールクリーニング液(レールクリーナー)
レールクリーニング液(レールクリーナー)
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鉄道模型メーカーからレールクリーニング液(レールクリーナー)という洗浄剤が市販されています。
スパーク汚れは、それを使用洗浄するのが一般的です。
消毒用アルコールや塗料用薄め液(=シンナー)、無水アルコールでも代用できますが、
プラスチック(車体や台車、レールの道床など)やゴム、塗装を痛め、
変色・ひび割れ・表面がボロボロになる、などのトラブルが発生する場合があるのでお勧めしません
(※洗浄効果はレールクリーナーよりも高い場合もありますが、トラブルの元になりやすいのでビギナーにはお勧めしません)。
カセットデッキ/ビデオデッキ用のヘッドクリーニング液はプラスチックを痛めない代用品として使用できます。
レールクリーニング液は下記のメーカーなどから発売されています。
アルコール系の方が即効性に優れますが、独特の匂いがあります。
嫌な方は界面活性剤系を使うと良いと思います(界面活性剤系の方が安全性もより高いでしょう)。
なお、レールクリーニング液にはサビや接着剤、塗料などを除去する能力はありません。
サビや接着剤、塗料などは金属磨きや目の細かい紙やすり(2000番などなるべく細かいもの)
等で物理的に除去する必要があります(後述)。
■ 車輪の清掃(スパーク汚れの除去)
車輪の清掃(スパーク汚れの除去)
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車輪の汚れの除去には、レールクリーナーを綿棒に染み込ませて行うのが一般的ですが、
なにぶん数が多いのと小さいので面倒です。
トレーラー(=モーターが入っていない客車など)は以下の方法で行うと簡単です。
- レールを一本用意する(1車両よりやや長いサイズ、短ければ数本つなげる)。
- 薄手の古布(古Tシャツや古ワイシャツ)やクッキングペーパーを用意する。
(ティッシュペーパーはすぐにボロボロになり、
発生したゴミが別のトラブルを起すのであまりお勧めしません)。
- 布にレールクリーナーを染み込ませる。
- レールクリーナーを染み込ませた布をレールに被せる。
- 布を上から車両をレールに乗せ、手で車体を前後に動かす。
- 布をずらしたりしながら車輪を洗浄し、
布に黒い筋がつかなくなったらクリーニング終了。
上記の方法はモーター車には適応できません。
何故なら、モーター車の車輪は車両をレールに乗せ、
手で車体を前後に動かしても回らないからです
(動力の伝達にウォームギヤを使っている為です)。
車両をレールに乗せ、無理に手で車体を前後に動かしても、
車輪の一部しか清掃できないばかりでなく、
スリップ防止用のゴム車輪やギヤ(歯車)を痛めます。
モーター車の清掃はレールクリーナーを綿棒に染み込ませて丹念に行うか、
あるいは下記のツールを使用すると便利です。
津川洋行のホイルクリーナー ソフト君は本体のコードをコントローラーにつなぎ、
モーター車をのせ、コントローラーの電圧を上げるだけで車輪を清掃できます
(=ホイルクリーナーの通電布の上で車輪が空回りし、清掃される)。
※津川洋行のホイルクリーナー スーパー/LA-133は、
真鍮ブラシ製なので、
力をかけて長時間使用するとゴム車輪などを傷める恐れがあり、
あまりお勧めしません。
マッハ模型のホイルクリーナーは、一方の台車を金属接点に乗せてここから集電、
他方をマジックテープ上にのせこちらの車輪が空回りすることで清掃されるという方式です。
トミックスの「マルチ車輪クリーニングレール」は、
レールの外側にクリーニングヘッドがあり、
レールに通電された電流でヘッドが左右に動き、
上を通過する車輪を清掃するというしくみです。
クリーニングヘッドが左右に振動するので作動音がけっこう大きく、
気になる方もおられるかもしれません。
また、通常走行では通過する時しか車輪を清掃しないので、
ガンコな汚れを落とすのにはかなり時間がかかるようです。
補足
KATOから、車輪用に先端尖りクリーニング綿棒
(検索結果)
や線路掃除用のクリーニング綿棒
(線路クリーニングキット)も発売されています。
100円ショップ等で売っている汎用品でも十分手入れできますが、
専用品の方が使いやすいようです。
■ レールの清掃(スパーク汚れの除去)
レールの清掃(スパーク汚れの除去)
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車輪だけでなく、レールも清掃する必要があります。
レールもレールクリーニング液を綿棒に染み込ませて行うのが一般的です。
クリーニングする路線が長い場合には、
手ごろな棒の先に薄手の古布(古Tシャツや古ワイシャツ)を巻きつけたものが便利です(2本まとめてクリーニングできるので)。
本格的なレイアウトには架線柱・トンネル・鉄橋などがあって、これらの方法はなかなか面倒です。
こういった場合は、「クリーニングカー」なるツール(車両)を使用すると便利です。
クリーニングカーにはブラシやローラーなどが装備されており、
それらにレールクリーニング液を染み込ませた後、
しばらく走行する(=何週かさせる)のが一般的な使い方です。
思った以上に効果がありますが、頑固な汚れの場合、手で清掃するのに比べると能力は落ちます。
こまめに使用するようにするのと、頑固な汚れは手での清掃を併用するのがよいでしょう。
なお、かなり古い製品になりますが、100円ライター点火用の石を車輪に転用して「クリーニングカー」として発売していた製品が、
かつてTOMIXから発売されていました(クモヤ193系)。
開発当時のTOMIXのレールはステンレス製で、このクリーニングカーを使用しても問題ありませんが(※ポイントのフログを除く)、
現在のTOMIXのレールや他社製のレールはこのクリーニングカーを使うと表面を痛めます。
今となってはコレクターアイテムとして楽しむに留め、クリーニング台車で走行させない方がよいでしょう
(通常車輪の台車も付属していますので、走行時にはその台車に交換してください。
クリーニング用のモーターが空転するようになるので、過熱防止の観点からはモーターを抜いた方がよいですが)。
■ スパーク汚れの必殺技 LOCO
スパーク汚れの必殺技 LOCO
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アルケ株式会社から
集電性向上剤 LOCO
という製品が発売されています。
詳しくはLOCOのウェブサイトをご覧になるのが一番かと思いますが、
車輪に数滴つけ、しばらく走行するだけで、
車輪やレールもきれいになってしまうという優れものです。
LOCOは便利で簡単、さらに効果が非常に高いものですが、
スリップ(空転)しやすくなる、汚れをレール上の一箇所にかきあつめてしまう場合があるなどの現象も発生することがあります。
過信(=なんでもかんでもLOCOだけで対処しようとする)は禁物かな?というのが使ってみた感想です。
通常のクリーニングと併用するのが良いと思います。
また、レンタルレイアウトによっては、スリップしやすくなるのと、車輪の汚れをレールに付着させる場合があるので、
使用を禁止しているところもあります。
もっとも、レイアウト内の使用を禁じているだけで、LOCOを使用したことのある車両の乗り入れを禁じているわけではなく、
他のお客様に迷惑がかかるおそれがあるので、(LOCOの使用を含めた)メンテナンスはレイアウトの持参前に行って下さいという意味です。
レールのほこりも意外とばかにできません。
車両の風圧でほこりを巻き上げ、それがギヤなどにからまって走りが悪くなることがあります。
レールのほこりは掃除機をかけるのが一番てっとり早く確実ですが、
レールの清掃と同じく、レイアウトでは掃除機もかけにくいです。
こういった場合は、掃除機タイプ(=ほこりを吸い取るタイプ)のクリーニングカーを使用すると便利です。
掃除機タイプのクリーニングカーは本物(?)の掃除機に比べるとはるかに小さいですが、
けっこう強力で、レイアウトを何週かすると思った以上にほこりがたまっていたりします。
ギヤや軸受けにからまって走りが悪くなっている場合には、
これを除去する必要があります。
古歯ブラシにレールクリーニング液を少々つけて磨くとギヤの間に挟まっているほこりもある程度取れます
(古歯ブラシでこすると、ほこりよりスパーク汚れが落ちますが・・・)。
ビギナーの方にはこの方法がお勧めです。
本格的に行う場合は、台車を分解し針や外科用ピンセット(=先が細いピンセット)
や綿棒で丹念に除去する必要があります。
分解清掃は経験者かメーカーにまかせた方が安全です。
特に蒸気機関車はロッドとギヤの位相合わせが難しく、
失敗すると走行できなくなりますので手を出さない方が無難です。
※マイクロエース製のモーター車や2008年くらい以降に新規設計されたKATO製のモーター車
(例:N700系など小型モーター採用製品)も一旦分解すると、
元に戻すのが難しいので手を出さない方が無難です。
■ サビや接着剤、塗料などの除去
サビや接着剤、塗料などの除去
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長時間走行しなかったり、保管状態が悪いレール/車輪はサビが発生することがあります。
サビは電気を通しませんので、走行不良の原因になります。
また、レイアウト工作で接着剤や塗料がレールに付着してしまうこともあります。
これらのものはレールクリーニング液
(レールクリーニング液を使用した方式を湿式クリーニングと呼びます)
では除去できず、
金属磨きや目の細かい紙やすり(2000番などなるべく細かいもの)で物理的に除去するしか方法がありません
(このような方式を乾式クリーニングと呼びます)。
金属磨きや紙やすり(耐水ペーパー)でレールを磨く場合、
1000番以下の目の荒いものは使用しないで下さい。
目の荒いものを使用すると、一時的には問題なさそうに感じますが、
レールの表面に細かな傷がつき、その傷から前述のスパーク汚れが非常に発生しやすくなります。
傷の中のスパーク汚れはレールクリーニング液でも除去しにくく、
すぐに傷を中心にスパーク汚れが発生し、
またクリーニングしないと走らなくなるはめになります。
これを繰り返すと傷が増えてますます汚れて・・・と悪循環に陥ります。
紙やすりよりもレールに傷がつきにくいものが下記メーカーから発売されていますので、
乾式クリーニングにはそれを使うことをお勧めします。
カトーなど一部メーカーのレールの取り扱い説明には、
「紙やすり等では絶対に磨かないで下さい」
という表記があります。
カトーのレールはトミーなどと比べると柔らかいので傷が付きやすく、
特に荒い紙やすりで磨くと致命傷になりかねないのでこのような記述があるようです
(「絶対に乾式クリーニングをしてはいけない」という意味ではなく、
「乾式クリーニングしなければならないような扱いをしないように」
と解釈した方がよいでしょう)。
乾式クリーニングは前述のようにレールを痛めやすいので、
通常は湿式クリーニングを行い、
湿式クリーニングで除去できない時だけ乾式クリーニングをするのがよいと思います。
なお、荒い紙やすりで傷だらけになったレールは以下の手順である程度復活します。
- ピッカフェルトやシノハラのレールクリーナー消しゴムタイプで根気良く磨いて表面の傷を消す
- (メッキが剥がれているので)表面保護の為に、
LOCOかマッハ模型 LSPオイル等のほこりのつきにくい潤滑剤を薄く塗布する(綿棒で軽く塗布した後、
乾燥した綿棒でふき取るとよい)
このコンテンツの内容はアマチュア鉄道模型連絡会の公式(?)見解ではなく、
あくまでも執筆者の個人的な意見です。